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전체 공개 ・ 2025.05.23

2025.05.21 (Wed)
舞台は18世紀はじめのヴェネツィア。実在したピエタ慈善院内に組織された「合奏・合唱の娘たち」の一員、エミーリアという人物の視点で描かれる、ピエタを取り巻く女性たちと、そこで音楽教師を務めたアントニオ・ヴィヴァルディをめぐる物語。 この物語に惚れ込んで舞台化をプロデュースした小泉今日子が朗読を、同舞台で音楽を担当した向島ゆり子がこちらでも音楽を担当するという、聴覚的にも最高の情熱が加えられたaudible作品である。 アントニオ・ヴィヴァルディがピエタの音楽教師をしていたというのは本当のことで、ピエタのために作曲もした。作中に何度か登場する協奏曲集「L’estro Armonico」は、300年後の現在でも演奏されるバロックの傑作である。日本語では『調和の霊感』と訳されるこの曲は、「四季」を含む『和声と創意への試み』と並んでよく演奏され、イ・ムジチやイ・ソリスティ・イタリアーニの録音でも長く親しまれている。 また、冒頭から登場するヴァイオリンの天才、アンナ=マリーアも実在のヴィルトゥオーゾであり、ヴィヴァルディは彼女のために協奏曲を何曲も作ったという。 物語では、そのヴィヴァルディの訃報を聞いたエミーリアが、初めは図らずも、次第に使命感を覚えて師の足跡を辿っていく。貴族の娘ながらピエタで音楽を学んだヴェロニカ、コルティジャーナ(高級娼婦)のクラウディア、ゴンドリエーレのロドヴィーゴなどの人物が、亡きヴィヴァルディ先生のことを語る口調が、それぞれの言葉で生き生きと描かれる。それらが次第に繋がり、ヴィヴァルディの想いが現像されていく。 作中には、たまたま昨年展覧会を見に行った画家のコルネットも登場する。彼の登場により、それまでは石造りの建物にとどまっていた風景が、一気にカナル・グランデを中心とするヴェネツィア全体に広がる。まるでコルネットが気球を持ってきたような効果を感じた。絵を見ておいてよかった。 小泉今日子の朗読は、実際に舞台化を手がけただけに素晴らしいクオリティであった。決して多くはない登場人物のセリフを、過剰な演技にならない程度に程よく読み分けている。音楽もおそらくピリオド楽器で演奏されているのだろう。ヴェネツィアの風や潮の香を感じさせるような爽やかで霊的な響きによって、作品を見事に彩っている。 これはaudible化によるコンテンツの高次化が非常に上手く行った例として語られるべき作品だと思う。ぜひ「聴く」ことを薦めたい。