原田マハの作品を読むと、自分の教養が2段階くらいレベルアップした気持ちになる。
Audibleで彼女の作品を聴いたのは初めてであったが、朗読の中谷美紀が脅威のパフォーマンスを披露しており、舌を巻いた。
雑誌「GOETHE」Web版のインタビューでは、自分1人で表現し切れるかと悩んだ末、能を参考にし、無理に演じ分けるのではなく、感じたままに演じよう、と臨んだのだという。
ウィーンフィルのヴィオラ奏者と結婚して、拠点をオーストリアに移した彼女は日頃ドイツ語に親しんでいるはずだが、作品中にたくさん出てくるフランス語を、きれいに発音してくれる。それがまた作品の世界観がパリにあり、独白者がフランス語話者であることをはじめから終わりまで意識させる。
2019年に実際にオークションに出品され、およそ2000万円で落札されたリボルバーから着想し、ゴッホとゴーギャンの関係性を独自の視点で解いていく。主人公の冴は原田マハ自身だ。
互いの依存、憧れ、劣等感が捩れながら交錯する様子が、それぞれの視点で見事に描かれていく。
そしてゴーギャンがタヒチで愛人としたヴァエホのみずみずしい独白の美しいこと。その血を受け継ぐサラの母に対する想いもまた、じんわりと響く声で心を打つ。
これもまたAudibleの名作となるだろう。